エクスプロイト戦略
エクスプロイト戦略を探す

エクスプロイト戦略を探す

均衡戦略を取っている限り、相手のアクションを無差別にできます。これは相手がどんなアクションを取ってもEVが変わらないということで、相手の戦略がわからなくても有効に作用し、一定の利益をもたらします。では、相手の戦略が均衡戦略ではないとわかっているとしたらどうでしょう。

プレイングミスとは何か

もう一度確認しますが、均衡戦略はエクスプロイトされません。 相手がどんなアクションを取っても EV が変わらないからです。言い換えると、均衡戦略でない戦略を取ってしまうとエクスプロイトされるような弱点が生まれるということです。ポーカーでは均衡戦略でない戦略は全てプレイングミスだと言い換えることができます。

エクスプロイトするとはどういうことか

相手が均衡戦略ではないとわかっており、またそのプレイングミスがどんなものかわかっている時、EV を増加させる対抗戦略が生まれます。

わかりやすい例では、相手が一切ブラフしないといったものです。こちらのコンデンスドレンジでのコール/フォールドが無差別でなくなるので、コールの頻度が減りフォールドの頻度が増えるだろうと直感的に理解できます。これは相手のプレイングミスをエクスプロイトするためにこちらも均衡戦略から外れたプレイを行うことになっているので、エクスプロイトすることは自発的にポジティブなプレイングミスを起こすことだと考えることができます。

相手が一切ブラフしない例での最大限エクスプロイト戦略(EV が最も高くなる戦略)では、まずはコンデンスドレンジでのコールを 0%にします。相手がブラフしない以上、コンデンスドレンジはブラフキャッチとしての役割を担いません。そのため、コールする時の EV よりもフォールドする時の EV の方が大きくなります。さらに、相手からのブラフレイズの危険性がなくなることから、コンデンスドレンジの上位でベットした方が利益的になります。しかし、ここまで極端なエクスプロイト戦略を取ってしまうと、それが発覚した時のリスクも大きくなります。エクスプロイト戦略にはそのカウンターとなるエクスプロイト戦略があるからです。

均衡戦略を意識する

エクスプロイト戦略を見つけるには、まずは均衡戦略を理解する必要があります。均衡戦略は各シチュエーションで「どんな頻度でブラフベットすべきか」「どんな頻度でブラフキャッチすべきか」といった基準となる戦略として機能します。その上で、相手のプレイングが均衡戦略からどのように外れているかを推定することでエクスプロイトすべき弱点が浮かび上がってきます。

均衡戦略は人間がその場でインスタントに導き出せるようなものではありませんが、簡略化して推察できます。例えば、次のような質問を自分の頭の中で投げかけて考えてみます。

  • ナッツハンドは何か
  • ナッツハンドを持っているのは誰か(=ポラライズドレンジなのは誰か)
  • コンデンスドレンジなのは誰か
  • バリューレンジのうち最低 EQ のハンドは何か
  • ブラフレンジのうち最高 EQ のハンドは何か
  • 自分のベットに対して相手がレイズしてくる場合、それはどんなレンジか
  • 自分のベット額に対して、相手はどんな頻度でコールするべきか
  • 相手のベット額を考えたときに、相手のブラフ頻度はどうあるべきか

出てきた答えが均衡戦略へ近ければ近いほど良いですが、ある程度間違っていてもかまいません。少なくとも、何も手がかりがない状況よりは遥かに正確なエクスプロイト戦略が導き出せるはずです。

相手のプレイングミスを探す

頭の中に思い描いた均衡戦略から相手のプレイングがどのように・どれくらい外れているかを考えます。代表例は以下です。

  • プリフロップでのアクションに対し、最終的ににショーダウンしたハンドの EQ が低すぎる
  • アグレッシブなアクションに対して、最終的にショーしたハンドの EQ が低すぎる(≒ 相手の思っているバリューレンジが均衡よりも広すぎる)
  • ブラフの頻度が高すぎる(≒ブラフレンジが広すぎる)
  • コールの頻度が高すぎる(≒コンデンスドレンジでのコール範囲が広すぎる)

各カウンター戦略の EV を推定する

相手のプレイングミスに対するカウンター戦略は複数存在し、それぞれ EV が違うことが多いです(もちろん、複数のカウンター戦略の EV が同じこともあります)。それぞれのカウンター戦略を見比べて、より EV が高くなる戦略がないか考えていきます。

例えば、コール頻度が少なすぎるプレイヤーがいたとき、ブラフの頻度を高くするというのはすぐに思い付きます。ただ、ここからより EV が高くなる戦略を探していくと、バリューレンジのうちベットする範囲を狭めてチェック/コールのアクションラインに変化させるというのも思いつきます。相手のコール頻度が少ないということはこちらのバリューベットの頻度を下げてもベットの EV があまり減少せず、相手のブラフレンジのベットやコンデンスドレンジでのシンバリューベットにコールした方が EV がより増加するからです。

均衡からどれくらい離れるか決める

相手のプレイングミスが明らかなとき、最大限エクスプロイト戦略は均衡から大きく離れることになります。たとえば、それまでブラフレンジの 13\frac13 の頻度でブラフしていたものが、毎回(=100%の頻度で)ブラフするようになるといった形です。

ただ最大限エクスプロイト戦略のように均衡戦略から離れれば離れるほど、プレイングミスの読みが間違っていた時の EV の損失や、エクスプロイト戦略が相手に発覚した時のリスクが大きくなります。とくに、上手い相手との戦いではどんなエクスプロイト戦略をとっているかという読み合いの勝負の側面が生まれます。これも均衡戦略から離れれば離れるほど読み合いの重要度が増えていきます。