GTO基礎
ベットにまつわる均衡

ベットにまつわる均衡

各シチュエーションでどんなハンドでどんなサイズでベットするか決定するには、まずはベットとコールにまつわる均衡を知る必要があります。それぞれベットサイズに応じて最適な割合・頻度が存在し、それを基に紐解いていくとベットアクションにまつわる色々な概念を理解できます。

均衡戦略ディフェンス頻度

お互いの性格を知り尽くした永年のライバルでもない限り、対戦相手の戦略は常に不透明で、どんなハンドでバリューベットやブラフベットをしてくるのかわかりません。こういう時こそ均衡戦略の出番です。相手のバリューベットに対してこちらができることは何もありませんが、どんな頻度でブラフベットしてくるかを無差別にするコール頻度は存在します。相手のブラフベットの頻度を無差別にできれば、相手がどんな割合でバリューベットとブラフベットをミックスしているかを気にする必要がなくなります。

相手のベットサイズをポットの BP\frac{B}{P} としたとき、 PB+P\frac{P}{B+P} の頻度でコールすると相手のブラフベットのEVを0にできます。ブラフハンドのチェックでのEVは0なので、ブラフベットのEVを0にできればブラフハンドでのベットとチェックを無差別にしていると言えます。

ベットサイズ均衡戦略コール頻度EV
ポットの 14\frac1445\frac4525\frac25 Pot
ポットの 13\frac1334\frac3438\frac38 Pot
ポットの 12\frac1223\frac2313\frac13 Pot
ポットの 23\frac2335\frac35310\frac3{10} Pot
ポットの 34\frac3447\frac4727\frac27 Pot
ポットと同額12\frac1214\frac14 Pot
ポットの 32\frac3225\frac2515\frac15 Pot
ポットの 2 倍13\frac1316\frac16 Pot
ポットの 10 倍111\frac{1}{11}122\frac1{22} Pot

ポット比でのベットサイズが大きくなればなるほど、均衡戦略でのコール頻度が低下することがわかります。これはコールするハンドレンジをより絞ることができることを意味していて、大きいベットサイズには狭いハンドレンジでしかコールできませんが、小さいベットサイズには広いハンドレンジでコールできます。

自分のハンドレンジにおいてレイズの選択肢がある場合はこれもコール頻度に含められます。また、その際に一定のフォールドエクイティを期待できることからレイズの選択肢がある場合はより高い頻度でレイズ/コールを選択できます。

均衡戦略ブラフ頻度

同様に、自分がベットする際にも均衡戦略が存在します。均衡戦略では相手のコールのEVを0にでき、コールとチェックを無差別にします。ベットサイズをポットの BP\frac{B}{P} としたとき、ベットのうち BB+P\frac{B}{B+P} の割合でブラフが混ざっているようにすると均衡戦略となります。

ベットサイズ均衡戦略ベット内訳EV
ポットの 14\frac14バリュー 5 : ブラフ 135\frac35 Pot
ポットの 13\frac13バリュー 4 : ブラフ 158\frac58 Pot
ポットの 12\frac12バリュー 3 : ブラフ 123\frac23 Pot
ポットの 23\frac23バリュー 5 : ブラフ 2710\frac7{10} Pot
ポットの 34\frac34バリュー 7 : ブラフ 357\frac57 Pot
ポットと同額バリュー 2 : ブラフ 134\frac34 Pot
ポットの 32\frac32バリュー 5 : ブラフ 345\frac45 Pot
ポットの 2 倍バリュー 3 : ブラフ 256\frac56 Pot
ポットの 10 倍バリュー 11 : ブラフ 102122\frac{21}{22} Pot

バリューターゲットとベットサイズの決定

バリューベットをする際にどんなハンドにコールしてもらえるか考えます。コールを期待できるハンドを バリューターゲット と呼びます。バリューターゲットはブラフベットする際にも考える必要があって、なぜなら均衡戦略でのブラフベットにはベットサイズに応じてバリューベットに対する一定の範囲のブラフレンジが選択されるためです。

バリューターゲットが少なかったり、想定されるハンドが一定以上に強い場合は均衡戦略でも一定のベットサイズまでコールが期待できるのでより大きいベットサイズを選択できます。ある状況においてツーペアではポットの 23\frac23 のベットにコールでき、ミドルフラッシュであればポットの 53\frac53 でもコールできるのような考え方をするわけです。

より大きいベットサイズが選択されるシチュエーションはポラライズされており、均衡戦略ではベットサイズが大きければ大きいほどより広いブラフレンジをミックスします。これを逆に考えると、 より大きいベットであるほどバリューレンジにより強いハンドが必要になる ことの理由になります。

ベット額のグループ化

さて、ベットサイズとハンドの強さに相関があることを確認しました。ではX軸をハンドの強さ (≒相手のコールレンジの狭さ) 、Y軸をベットサイズとして対応する点を結んでみると、ベットサイズ曲線ができあがります。ベットサイズ曲線はハンドごとに最適なベットサイズを知るのに役立ちます。

ベットサイズ0%200%ハンドレンジブラフバリュー

しかし、この曲線に沿ってベットサイズを決定しようとすると致命的な問題があることに気が付きます。ハンドの強さに緻密に対応するベットサイズを選択するということは、 逆にベットサイズからハンドの強さを導き出せてしまう ということです。

この問題を防ぐために、利用するベットサイズの種類を減らして平均化することで対応してみます。多くのプレイヤーが用いるような 33% ポット、 75% ポット、 150% ポットといったベットサイズのみを利用するようにグラフを均してみると次のようになります。

ベットサイズ0%200%ハンドレンジブラフバリュー

このように、用いるベットサイズの種類を減らし、対応する強さのハンドとその周辺すべてをそのベットサイズでベットするようにすると問題が解決します。ベットサイズに対応するハンドレンジが充分な組み合わせ数を確保できるためです。「ポットの50%未満」「ポットの50%以上・100%以下」「ポットオーバー」といった最低でも3種類のベットサイズを用意しておくと使いやすいです。

ハンドレンジに入れるハンドを選ぶ

23\frac23 の頻度でコールする」もしくは「 14\frac14 の割合でブラフベットする」といった場合、どのようなハンドを選択するべきでしょうか。コールにおいてはその後のランアウトを考慮してEQRに問題がないハンドを選ぶのが筋でしょうし、ある程度のEQを有するハンドをブラフに利用するにはショーダウンバリューがもったいないです。大まかなシチュエーションごとにどのようにハンドを選択していくかという指針を確認してみます。

コールに適したハンド (リバー)

リバーではその後のランアウトもなく、自分のコールでストリートを閉じるのでEQとEVが一致します。EQが高いハンドを上から順番に入れていけば問題ありません。

コールに適したハンド (フロップ・ターン)

次以降のストリートでランアウトがあるフロップやターンでは、現時点でのEQだけではなくEQRにも気を遣う必要があります。これは個々のシチュエーションによって細かく違いますが、大まかな指針としては次のとおりです。

  • ミドルヒットやボトムヒットのハンドは現時点でのEQこそ高いですが、ランクの強さによってはその後の展開でEQRに多くの問題を抱えます。したがって、多少EQが低くともEQRの高い選択肢がある場合はそちらを優先すべきです。
  • フラッシュドローやオープンエンドストレートドローなどのアウツの多いドローハンドはコールに適しています。次以降のストリートでの判断があまり難しくなく、ドローが完成した後にはナッツ級のハンドになることが多いのでEQRが高いです。
  • 明確にコールするべきハンドをコールに回してもまだ足りない場合、相手のバリューレンジの一部をブロックしている高EQのハンドなどを入れるべきです。バリューレンジを一部でもブロックしていれば、相手のバリューレンジ対ブラフレンジの比率が微量ながらブラフレンジ過多になるからです。

ブラフベットに適したハンド

ブラフベットにおいても個々のシチュエーションごとの戦略を細かく定義するのは難しいので指針

  • フロップやターンではアウツの多いドローハンドはブラフよりもチェック/コールのアクションラインをとった方がEVが高いことが多いです。ブラフベットに適しているのはアウツは少ないものの完成するとナッツ級になるハンドで、たとえばワンオーバーバックドアナッツフラッシュドローやワンオーバーバックドアナッツストレートドローなどが該当します。
  • 少しでもショーダウンバリューのあるものはブラフベットに適していません。チェックのEVがベットのEVを上回ります。
  • 相手のコールレンジの上位をブロックしているハンドはとくにブラフに適しています。相手のコールレンジを一部でもブロックしていれば、相手のコール頻度が微量ながら不足することになるからです。