ハンドの性能の定量化
「A8 のようなハンドよりも 87 のようなスーテッドコネクターの方が扱いやすい」。あるいは強いとまで考えている人も多いでしょう。
ハンドの強さには色々な見方があります。ざっと考えてみただけでも、次のような要素が思いつきます。
- ハイカードやキッカーのランクの強さ
- その 2 枚のカードでできる最高の役は何か
- 強い役ができるアウツの多さ
- 相手のベットアクションに対する判断の容易さ
- ブロックしている相手の強いハンドの数
- ブロックしている相手の弱いハンドの数
EQ
一般的に「ハンドの強さ」と言ったとき、それは EQ(エクイティ)を意味します。EQ はそれ以上のベットアクションがないと仮定してどれだけのポットシェアを持つかを示す値で、30% EQ や $12 EQ のように表します。勝率と違い、同じハンドを複数プレイヤーが持っていたときはポットをチョップするので EQ は勝率よりも低くなります。
EQ の高いハンドは強いハンドだとそのまま言い換えられます。ただ、 EQ が高くてもアグレッシブなアクションをできるとは限りません。ショーダウンバリューはあるものの薄いバリューベットしかできない状況にあるハンドも数多く存在します。
「強いハンド」「弱いハンド」という表現にはさまざまな観点があるため、このウェブサイトではおおむね「高EQのハンド」「低EQのハンド」と表現します。
EV
高 EQ のハンドも相手からのベットによってフォールドさせられてしまうことがあります。あるいはベットアクションによってポットが将来的に大きくなり、最終的に EQ 以上の利益を生むこともあります。こうした 将来的なアクションを加味したポットシェア をポーカーでは EV(Expected Value)と呼びます。こちらも 30% EV や $12 EV のように表します。
EQ に比べて EV は計算するのが非常に困難です。ゲームツリーの経路によって最終 EV はそれぞれ違い、分岐の数と回数を考えるととても人間の手で計算することはできません。通常、PioSOLVER (opens in a new tab)やGTO Wizard (opens in a new tab)のようなツールで均衡戦略を模索し EV を概算します。
EQR(エクイティ具現性)
EQ と EV が違う理由を言い換えると、ベットアクションによって EQ として存在するはずのポットシェアが最終的に現実のものになるとは限らないからだと言えます。相手の強いベットアクションによってフォールドさせられてしまったり、逆にブラフベットによって EQ 以上のポットを獲得できることもあります。EQ どおりのポットを獲得することを エクイティ具現 またはエクイティ実現と呼び、その蓋然性を EQR という指標で表現します。
EQ を 、 EV を としたとき、EQR は と数値化できます。EQ のわりに EV が低いというのは本来の EQ の具現蓋然性が低いということで、逆に EV が高いわりに EQ が低いのは具現されるべき EQ 以上のポットシェアを獲得できるかもしれないということです。
EQRは「エクイティ具現」という行為、またはその概念そのものを指すこともあれば、数値化された指標のこともEQRと呼ばれていたりもします。
一般的に EQR はベットアクションによって上下します。そのため、ベット機会の多い IP のプレイヤーの方が EQR が高くなりやすく、OoP のプレイヤーほど EQR が低くなりやすいです。
EQR の高いハンドと低いハンド
EQR は EV と EQ の比率から求められるので、87 のようなスーテッドコネクターや A5 のような A ロースーテッドなど、いわゆるドローハンドの EQR が高くなりやすいです。ドローハンドは完成前ではブラフハンドとして、フラッシュやストレートの完成後はバリューハンドとして、どちらの状況でもベットに利用される価値があります。
逆に、A8 のような中途半端なハンドは EQ のわりに EV が低いので EQR が低くなります。EQR の低いハンドにはマージナルハンドが多く、そうしたハンドはコールしてもらいたいベット対象がブラフレンジのためチェック/コールのアクションラインをとってポットをあまり膨らませないようにします。それでもブラフレンジの一部からはベットアクションが飛んでくるのでフォールドさせられてしまうこともあり、結果として EQR が低くなるというわけです。
EQRは1を超えることもあります。インポジションでEVの高いドローハンドを持ち、これまでの相手のプレイングの傾向から大きなインプライドオッズを期待できる時などはEVがEQを越え、結果としてEQRが1以上になります。